Bethelgeuse’s blog

最近のneuroscience系科学論文を簡単なコメントつきでアップ

知的障害の原因遺伝子としてSIN3Aが同定

Nature Geneticsより。知的障害や自閉症に関係する遺伝子は多数報告されていますが、新しい遺伝子変異としてSIN3A (switch-insensitive 3 family member A) が同定されました。SIN3Aは転写抑制因子として機能し、Rett症候群の原因遺伝子MeCP2と結合すること…

抗精神病薬によって副作用のカタレプシーが出る分子メカニズム

Neuronより。抗精神病薬のハロペリドールなどはドーパミン受容体D2Rを阻害することで薬効を発揮しますが、副作用としてカタレプシー (不自然な姿勢を長時間保つ) など錐体外路症状が現れることが知られています。D2Rは脳内の様々な細胞に発現していますが、…

多発性硬化症を対象としたS1P1,5受容体調節薬siponimod (BAF312) の臨床第2相試験結果

JAMA Neurologyより。Siponimodは、二次進行性多発性硬化症の患者を対象に現在臨床第3相試験中です。その前に行われた再発寛解型多発性硬化症患者を対象に行われた臨床第2相試験結果が論文公表されました。評価期間は最大24か月 (2年) で、安全性以外に、薬…

脳内血管病変とアルツハイマー病の関係

Lancet Neurologyより。2つの大規模臨床試験で、生前に認知機能試験を行い、かつ死後に病理解析データが得られた1143名の患者から、アルツハイマー病と脳内血管病変の関係性を解析した結果が発表されました。脳内血管病変としては、動脈硬化巣 (大小血管それ…

前頭側頭型認知症の原因となるタンパク質progranulin量と相関する遺伝子prosaposin

Nature Communicationsより。前頭側頭型認知症の原因となる遺伝子はいくつか知られていますが、その一つにGRN遺伝子のハプロ不全があります。GRNはprogranulinをコードし、そのprogranulinがハプロ不全で減少するため、前頭側頭型認知症が発症します。血漿中…

多発性硬化症患者の腸内環境の変化

Scientific Reportsより。多発性硬化症患者31名の腸内細菌と、健常者36名の腸内細菌を解析した結果、多発性硬化症患者ではPsuedomonas, Mycoplana, Haemophilus, Blautia,およびDorea属の細菌が多い一方で、健常者ではParabacteroides, AdlercreutziaおよびP…

RNAのメチル化と記憶の情報処理機構

Journal of Neuroscienceより。マウスの研究で、N6-methyladenosine (m6A) というRNAのメチル化が記憶の情報処理過程に重要な役割を果たしていることがわかりました。学習行動試験の後で、前頭前皮質においてm6Aが増加していることが見いだされ、さらに前頭…

ヒトニューロンでの単一細胞RNAシーケンスで明らかになったニューロンのサブタイプ

Scienceより。ヒトの死後脳のニューロンにおいて、single-nuclei sequencingでの単一細胞レベルでのRNAシーケンスによる遺伝子発現解析の結果、ニューロンが16種類のサブタイプに分類できることが報告されました。 Neuronal subtypes and diversity revealed…

ウエストナイル脳炎で記憶障害が起こる分子メカニズム

Natureより。蚊によって媒介される感染症、ウエストナイル熱はまれに脳炎を起こし、記憶障害が後遺症となって残ります。マウスのウエストナイルウイルス感染症モデルで、その分子メカニズムを解析した結果が報告されました。感染によって、補体分子C1QAの発…

α7ニコチン受容体アゴニストABT-126の統合失調症患者の認知機能に対する臨床試験

Neuropsychopharmacologyより。α7ニコチン受容体アゴニストABT-126の統合失調症患者の認知機能に対する作用を検証する臨床Ph2b試験。432名の統合失調症患者が参加し、80%にあたる患者が試験を最後まで完了しました。主要評価項目は認知機能スコアMATRICS Con…

多発性硬化症のリスクとなる新しい遺伝子座の同定

Science Advancesより。ドイツにおいて、4,888名の多発性硬化症患者と、10,395名の対照健常人のgenome-wide association study (GWAS) の結果、新規の遺伝子座としてL3MBTL3, MAZ, ERG, SHMT1が同定されました。L3MBTL3, MAZ, ERGは免疫細胞の機能制御に関わ…

マウスの大脳皮質-線条体神経投射の詳細な解析

Nature Neuroscienceより。大脳皮質-線条体神経投射は、体性感覚、認知機能や感情に重要な役割を果たしている神経回路で、ハンチントン病などでその神経投射が脱落することが知られています。マウスでの研究で、大脳皮質-線条体神経投射の詳細なマップが明ら…

小脳性運動失調症の新しい原因遺伝子CAPN1

Cell Reportsより。小脳性運動失調症にはたくさんの原因遺伝子が同定されていますが、現在英国に住むバングラデシュ系の家系から、CAPN1の変異によって小脳性運動失調症が起こることが報告されました。CAPN1はカルシウム依存的なプロテアーゼcalpain-1をコー…

パーキンソン病患者由来のドーパミン神経細胞での網羅的遺伝子発現解析

Cell Reportsより。家族性および孤発性のパーキンソン病の患者からiPS細胞を作製し、パーキンソン病で神経変性することが知られる、中脳ドーパミン細胞にiPS細胞を分化させ、パーキンソン病の病態細胞モデルを複数作製しました。病態細胞としての表現型とし…

妊娠中の腸内環境の変化と生まれてくる子供の神経発達障害

Cellより。妊娠中の肥満によって、生まれてくる子供に自閉症などの神経発達障害が起こるリスクが増加します。マウスの実験で、母親マウスに食事性の肥満を起こすと、生まれてくる子供に社会性行動異常が認められ、さらに脳内の神経伝達が低下していました。…

ストレスでてんかん発作が起こりやすくなる分子メカニズム

Science Signalingより。てんかんの患者では不安やストレスによっててんかん発作が起こる頻度が増加します。その分子メカニズムとして、ストレスホルモンcorticotropin-releasing factor (CRF) が流すシグナルが変化することが報告されました。つまり、てん…

若い世代 (children and adolescents) での抗うつ薬の作用比較

The Lancetより。若い世代 (children and adolescents) のうつ病に対する14種類の抗うつ薬 (amitriptyline, citalopram, clomipramine, desipramine, duloxetine, escitalopram, fluoxetine, imipramine, mirtazapine, nefazodone, nortriptyline, paroxetin…

脳のオリゴデンドロサイトの細胞系譜は12種類

Scienceより。単一細胞のRNA-seqの結果、マウスでは脳のオリゴデンドロサイトの細胞系譜は12種類に分かれているようです。オリゴデンドロサイト前駆細胞から成熟オリゴデンドロサイトまで、今まではデータベースなどでも3種類くらいでしたが、思った以上にオ…

多発性硬化症の造血幹細胞移植療法の臨床試験

The Lancetより。24名の多発性硬化症の患者さんに対して、カナダの3つの病院が行った臨床試験の成績です。多発性硬化症は、免疫細胞が自分自身のミエリンに対して免疫反応を起こしてしまうことにより発症する、自己免疫疾患的側面があります。そこで著者らは…

α-Synucleinがミトコンドリア機能を阻害する分子メカニズム

Science Translational Medicineより。α-Synucleinはパーキンソン病などの脳内に蓄積することが知られていますが、α-synucleinがTOM20に結合し、ミトコンドリアの機能不全を起こしていることが報告されました。TOM20はミトコンドリアの機能に必要なタンパク…

Neurofilament Light Chainが神経変性疾患の進行に伴うバイオマーカーとなる可能性

Neuronより。アルツハイマー病などの神経疾患では、脳に異常沈着し、病気の進行にしたがって脳が委縮します。MRIといった画像で脳の萎縮を観察する方法以外には、脳がダメージを受けていることを判定する体液性のバイオマーカーはありませんでした。今回の研…

腸内環境の変化がメタボを起こすメカニズム

Natureより。腸内環境の変化がメタボリック症候群と関係していることは知られていましたが、そのメカニズムはよくわかっていませんでした。腸内細菌の変化によって、酢酸の産生量が増加し、酢酸によって副交感神経が刺激されます。その結果、インスリンやグ…

抑制性のシナプスを除く分子生物学的手法の開発

Nature Methodsより。GFE3というツールを使って抑制性のシナプスの機能を壊す方法です。GFE3は、E3リガーゼと、gephyrin (抑制性ポストシナプスに発現) に結合する抗体様タンパクFingRの融合タンパク質です。GFE3を神経細胞に発現させることで、gephyrinがユ…

家族性Parkinson病の原因遺伝子としてTMEM230が同定

Nature Geneticsより。家族性のParkinson病 (PD) の原因となる遺伝子変異はたくさん同定されていますが、新たにTMEM230という遺伝子の変異がPDの原因となることが報告されました。TMEM230は膜貫通タンパク質で、シナプス小胞の輸送に関わっているようです。 …

RNAを標的とするCRISPRシステム

Scienceより。最近ゲノム編集で多用されているCRISPR-Casシステムは、通常DNAを切断しますが、CRISPR-Cas effectorのC2c2はRNAをガイドとして、RNAを切断するようです。CRISPR-Casシステムが飛躍的に発展を遂げています。 C2c2 is a single-component progra…

記憶を忘却するシグナル伝達に重要な遺伝子Scribble

Neuronより。ショウジョウバエでの報告ですが、Scribbleという足場タンパク質の上で、Rac1 -> Pak3 -> Cofilinという流れでシグナル伝達が行われ、記憶の忘却が促進されるようです。記憶の維持という観点からは、分子レベルで様々な研究がされていますが、逆…

多発性硬化症の原因となるNR1H3のミスセンス変異の発見

多発性硬化症には再発寛解型と進行型 (一次進行型と二次進行型があり) に分類されますが、治療が難しいとされる一次進行型多発性硬化症を発症する家系から、その原因となるNR1H3のミスセンス変異が発見されました。NR1H3は核内転写因子LXRAをコードし、脂質…

ALS患者の生存と相関する遺伝子CAMTA1 [文献リンク]

Association of a Locus in the CAMTA1 Gene With Survival in Patients With Sporadic Amyotrophic Lateral Sclerosis https://archneur.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2525542

ALS患者の生存と相関する遺伝子CAMTA1

JAMA Neurologyより。ALS患者4256名のGWAS解析の結果、10q23と1p36にALS患者の生存期間と相関する新しい遺伝子座が同定されました。1p36のrs2412208という部位はCAMTA1 (calmodulin binding transcription activator 1) 遺伝子座に含まれています。ALSの原因…

脳の透明化を使った神経活動のイメージング

脳の透明化を行って、脳内の神経活動を可視化する技術がCellに2報報告されました。単に透明化するだけでなく、脳の可塑的変化をイメージングし、定量する技術が進歩しています。 Mapping of Brain Activity by Automated Volume Analysis of Immediate Early…

CRISPR/Cas9を使った細胞系譜のトレース

Whole organism lineage tracing by combinatorial and cumulative genome editing http://science.sciencemag.org/content/early/2016/05/25/science.aaf7907 5/26 Scienceより。CRISPR/Cas9を使って特定のDNA barcodeを細胞に導入することで、特定の細胞か…

気になった科学論文の記録

最近の気になった科学論文を簡単なコメントつきでアップしていきます。