Bethelgeuse’s blog

最近のneuroscience系科学論文を簡単なコメントつきでアップ

Esketamineの治療抵抗性うつ病患者を対象とした臨床第2相試験

Biological Psychiatryより。抗うつ薬で改善しないうつ病は、治療抵抗性うつ病とよばれます。この治療抵抗性うつ病に対して、麻酔薬として用いられるケタミンが有効であるという臨床証拠があります。ケタミンはラセミ体で、S-(+)-ketamine (esketamine) とR-…

抗うつ薬SSRIによって骨粗鬆症が起こりやすくなるメカニズム

Nature Medicineより。選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) と呼ばれる抗うつ薬には、副作用として骨粗鬆症が知られていますが、なぜそうなるのかがよくわからず、そのため副作用に対処する方法もわかっていませんでした。今回、SSRIによって、脳内セロ…

家族性アルツハイマー病 (AD) の原因遺伝子presenilin 1 (PS1) 変異体によって細胞内カルシウム異常が起こる分子メカニズム

Science Signalingより。PS1は家族性ADの原因遺伝子で、AD患者脳に蓄積するアミロイドβ (Aβ) ペプチドを切り出す酵素の構成因子として知られています。今回の報告はよく知られたPS1とAβペプチドではありません。細胞内のカルシウム濃度は厳密に制御されてい…

高用量ビオチンMD1003の進行性多発性硬化症臨床第IIb/III相試験結果

Multiple Sclerosis Journalより。MedDay社が進行性多発性硬化症を対象に臨床試験を進めているMD1003 (高用量ビオチン) の臨床第IIb/III相試験結果が論文報告されました。MS-SPIと名付けられた臨床試験では、多発性硬化症に伴う身体障害が改善した患者の割合…

凝集アミロイドβ (Aβ) 抗体aducanumabによるアルツハイマー病 (AD) 患者脳内のAβ低下

Natureより。Aβ抗体はいくつか臨床試験で失敗していますが、aducanumabはAβの凝集体に結合するといわれてるのが特徴です。現在、Biogen社が臨床第三相試験を行っています。Aducanumabによって、ADマウスモデル、および臨床試験での患者での脳内Aβプラークが…

多発性硬化症を対象としたS1P1受容体modulator amiselimodの第2相臨床試験結果

Lancet Neurologyより。現在田辺三菱製薬が開発中のS1P (スフィンゴシン-1-リン酸) 1受容体modulator amiselimod (開発コード名MT-1303) の再発寛解型多発性硬化症を対象とした第2相臨床試験結果が論文報告されました。現在、多発性硬化症ではfingolimodがS1…

抗うつ薬SSRI服用初期に不安が惹起されるメカニズム

Natureより。抗うつ薬の選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) は、脳内のセロトニン量を増加させることで抗うつ作用を発揮します。しかしながら、服用し始めの初期の副作用として、不安を惹起することが知られていました。脳内のセロトニンが増えること…

動物個体全体の透明化uDISCO

Nature Methodsより。組織を透明化する様々な方法が報告されていますが、有機溶媒系の透明化法3DISCOを改良したultimate DISCO (uDISCO) という方法が報告されました。この方法では、有機溶媒による透明化の過程で、組織が元の大きさに対して最大で65%縮小し…

神経幹細胞移植と活性化プロテインC投与の組み合わせによる脳組織修復の促進

Nature Medcineより。活性化プロテインC (activated protein C) は血中のプロテアーゼで、抗凝固作用があります。この活性化プロテインCは皮膚にできた傷の治りを促進する作用があり、例えば糖尿病で足にできた潰瘍の治りをよくすることが報告されています。…

家族性ALSの原因遺伝子C9orf72の発現を制御する転写伸長因子Spt4

Scienceより。家族性ALSの原因遺伝子として、最も頻度が多いのがC9orf72という遺伝子の変異です。この遺伝子の変異は、他の神経変性疾患、前頭側頭型認知症 (FTD) の原因でもあります。C9orf72の変異体には、繰り返し配列GGGGCCが挿入され、その結果、繰り返…

家族性ALSの原因遺伝子の一つUBQLN2の変異体が起こす疾患の分子メカニズム

Cellより。先週はCellとScienceに、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) に関する分子レベルの報告がありました。家族性ALSはたくさんの遺伝子が報告されていますが、その中の一つUbiquilin-2 (UBQLN2) の変異によって、分子レベルでどのような異常が起こるのか、が明…

RNAseqを使った単一ニューロンの投射解析MAPseq

Neuronより。ニューロンが脳内の他の部位に投射しているのを解析する方法は、特定のニューロンに蛍光タンパク質などを発現させる方法が一般的です。今回の報告では、ニューロンに特定のバーコード配列 (人工的な塩基配列) を発現させた後で、脳を細かくスラ…

脳での神経新生のPETイメージング

Journal of Neuroscienceより。細胞が分裂するときに取り込まれるチミジンアナログに18F標識した[18F]FLTを使って、ラット脳内の神経新生の様子をPETでイメージングする方法が報告されました。[18F]FLT単独ではイメージングできるほど脳内への集積が認められ…

23andMeの遺伝子データを使った大うつ病のゲノムワイド関連解析 (GWAS)

Nature Geneticsより。遺伝子検査などのサービスを実施している23andMeのデータを使って、数万人規模の大うつ病患者のGWAS解析をした結果が報告されました。その結果、OLFM4、TMEM161B–MEF2C、MEIS2–TMCO5A、NEGR1などの15の遺伝座が大うつ病と相関している…

パーキンソン病治療薬レボドパ (L-DOPA) によるジスキネジアのメカニズム

Journal of Neuroscienceより。パーキンソン病は手の振戦などの不随意運動が現れる神経変性疾患で、薬物治療にレボドパ (L-DOPA) が用いられます。しかしながら、長期間レボドパを服用すると、皮肉なことに副作用として不随意運動が、5年以内に約半数の患者…

筋萎縮性側索硬化症 (ALS) のリスク遺伝子NEK1

Nature Geneticsより。ALSの原因遺伝子やリスク遺伝子は多数報告されていますが、ALSのリスクとなる遺伝子として、新しくNEK1 (NIMA (never in mitosis gene a)-related expressed kinase 1) が同定されました。NEK1遺伝子の機能不全loss-of-function (LOF) …

シナプスのPETイメージングプローブ

Science Translational Medicineより。シナプス小胞に存在するsynaptic vesicle glycoprotein 2A (SV2A) に結合するPETプローブ [11C]UCB-Jによってヒトでシナプスの量を測定することができるようになりました。実際にヒトてんかん患者でのシナプス減少を [1…

自閉症スペクトラムの末梢神経障害が引き起こす行動レベルでの異常

Cellより。自閉症スペクトラム患者の約60%が触覚を含む体性感覚の異常があります。また、自閉症スペクトラムのマウスモデルと言われるMecp2, Gabrb3, Shank3およびFmr1遺伝子変異マウスでも同様に触覚異常が認められます。マウスにおいて、触覚になどに関わ…

脳で遺伝子発現をオフにする仕組み

Scienceより。何らかの神経活動によって遺伝子発現がオンになった後、それらの遺伝子群の発現をオフにする仕組みが明らかになりました。マウスの実験で、nucleosome remodeling and deacetylase (NuRD) 複合体によって、クロマチンのリモデリング、この場合…

霊長類アカゲザルの脳の発生段階における詳細な遺伝子発現解析

Natureより。脳の発生段階における詳細な遺伝子発現変化は、特にヒトを含む霊長類では明らかではありませんでした。今回アカゲザルの脳を、胎生40日から生後48か月に渡って、脳の部位別 (前頭葉、線条体、扁桃体、海馬、大脳皮質視覚野) に網羅的遺伝子発現…

家族性パーキンソン病の発症を早める遺伝子座の同定

Human Molecular Geneticsより。NeuroGenetics Research Consortium (NGRC) に登録された家族性パーキンソン病431名、孤発性パーキンソン病1,544名のデータを使って、ゲノムワイド関連解析 (GWAS) を行った結果、LHFPL2とTPM1の遺伝子座が、家族性パーキンソ…

知的障害の原因遺伝子としてSIN3Aが同定

Nature Geneticsより。知的障害や自閉症に関係する遺伝子は多数報告されていますが、新しい遺伝子変異としてSIN3A (switch-insensitive 3 family member A) が同定されました。SIN3Aは転写抑制因子として機能し、Rett症候群の原因遺伝子MeCP2と結合すること…

抗精神病薬によって副作用のカタレプシーが出る分子メカニズム

Neuronより。抗精神病薬のハロペリドールなどはドーパミン受容体D2Rを阻害することで薬効を発揮しますが、副作用としてカタレプシー (不自然な姿勢を長時間保つ) など錐体外路症状が現れることが知られています。D2Rは脳内の様々な細胞に発現していますが、…

多発性硬化症を対象としたS1P1,5受容体調節薬siponimod (BAF312) の臨床第2相試験結果

JAMA Neurologyより。Siponimodは、二次進行性多発性硬化症の患者を対象に現在臨床第3相試験中です。その前に行われた再発寛解型多発性硬化症患者を対象に行われた臨床第2相試験結果が論文公表されました。評価期間は最大24か月 (2年) で、安全性以外に、薬…

脳内血管病変とアルツハイマー病の関係

Lancet Neurologyより。2つの大規模臨床試験で、生前に認知機能試験を行い、かつ死後に病理解析データが得られた1143名の患者から、アルツハイマー病と脳内血管病変の関係性を解析した結果が発表されました。脳内血管病変としては、動脈硬化巣 (大小血管それ…

前頭側頭型認知症の原因となるタンパク質progranulin量と相関する遺伝子prosaposin

Nature Communicationsより。前頭側頭型認知症の原因となる遺伝子はいくつか知られていますが、その一つにGRN遺伝子のハプロ不全があります。GRNはprogranulinをコードし、そのprogranulinがハプロ不全で減少するため、前頭側頭型認知症が発症します。血漿中…

多発性硬化症患者の腸内環境の変化

Scientific Reportsより。多発性硬化症患者31名の腸内細菌と、健常者36名の腸内細菌を解析した結果、多発性硬化症患者ではPsuedomonas, Mycoplana, Haemophilus, Blautia,およびDorea属の細菌が多い一方で、健常者ではParabacteroides, AdlercreutziaおよびP…

RNAのメチル化と記憶の情報処理機構

Journal of Neuroscienceより。マウスの研究で、N6-methyladenosine (m6A) というRNAのメチル化が記憶の情報処理過程に重要な役割を果たしていることがわかりました。学習行動試験の後で、前頭前皮質においてm6Aが増加していることが見いだされ、さらに前頭…

ヒトニューロンでの単一細胞RNAシーケンスで明らかになったニューロンのサブタイプ

Scienceより。ヒトの死後脳のニューロンにおいて、single-nuclei sequencingでの単一細胞レベルでのRNAシーケンスによる遺伝子発現解析の結果、ニューロンが16種類のサブタイプに分類できることが報告されました。 Neuronal subtypes and diversity revealed…

ウエストナイル脳炎で記憶障害が起こる分子メカニズム

Natureより。蚊によって媒介される感染症、ウエストナイル熱はまれに脳炎を起こし、記憶障害が後遺症となって残ります。マウスのウエストナイルウイルス感染症モデルで、その分子メカニズムを解析した結果が報告されました。感染によって、補体分子C1QAの発…