Bethelgeuse’s blog

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家族性アルツハイマー病 (AD) の原因遺伝子presenilin 1 (PS1) 変異体によって細胞内カルシウム異常が起こる分子メカニズム

Science Signalingより。PS1は家族性ADの原因遺伝子で、AD患者脳に蓄積するアミロイドβ (Aβ) ペプチドを切り出す酵素の構成因子として知られています。今回の報告はよく知られたPS1とAβペプチドではありません。細胞内のカルシウム濃度は厳密に制御されていますが、PS1の変異によってカルシウムの制御機構がどのように破たんするのか、その分子メカニズムが明らかになりました。細胞内の小胞体にはカルシウムが貯蔵されていて、小胞体内のカルシウムが少なくなると、センサータンパク質STIM1 (stromal interaction molecule 1) が感知して、細胞外からカルシウムの流入が起こるように働きかけます (ストア作動性カルシウム流入とよばれます)。今回、PS1を含むγ-secretaseという酵素がSTIM1を切断することが報告されました。PS1に変異が入ることで、このSTIM1切断が増加し、その結果、小胞体内のカルシウム濃度をきちんと検出できず、ストア作動性カルシウム流入が正常に起こらなくなることがわかりました。

Familial Alzheimer’s disease–associated presenilin 1 mutants promote γ-secretase cleavage of STIM1 to impair store-operated Ca2+ entry | Science Signaling