Bethelgeuse’s blog

最近のneuroscience系科学論文を簡単なコメントつきでアップ

Tauアンチセンスオリゴヌクレオチド (ASO) によるtau病理の減少と神経変性の抑制

Science Translational Medicineより。Tau認知症と深い関りを持つタンパク質で、アルツハイマー病 (AD) 患者脳の特徴的な病理像、神経原線維変化の構成成分として知られ、またその遺伝子変異によって若年性認知症、前頭側頭型認知症 (FTD) が発症します。Tauの発現を抑制するASOによって、病態モデルマウスで治療効果が認められたことが報告されました。ASOは核酸医薬品で、昨年末、脊髄性筋萎縮症 (spinal muscular atrophy: SMA) に対する初の治療薬として、米国FDAから核酸医薬品nusinersen (ヌシネルセン) が承認され、中枢神経疾患でも注目を浴びているタイプの医薬品です。今回の報告では、病態モデルとしてPS19マウスが用いられました。このマウスは、FTDの原因変異ヒトTau P301Sを発現し、加齢依存的に神経原線維変化、脳萎縮、さらには生存率の低下が認められます。このPS19マウスの脳室内にASOを投与した結果、神経原線維変化、脳萎縮、生存率、すべてが改善しました。また、ヒトに近い霊長類のカニクイザルに対してもASOを投与し、サルでもtauが低下することが合わせて確認されています。

Tau reduction prevents neuronal loss and reverses pathological tau deposition and seeding in mice with tauopathy | Science Translational Medicine