睡眠中のシナプスの構造変化: 覚醒時に比べて睡眠中はシナプス結合が減弱
Scienceより。睡眠中のシナプスの構造変化について解析した論文が2報同時に発表されました。1報目の論文では、電子顕微鏡によってシナプスの微細構造を三次元的に再構成しながら解析し、樹状突起のポストシナプスと軸索のプレシナプスが接している部分 (axon-spine interface, ASI) が睡眠中に約18%減少していることがわかりました。ポストシナプスとプレシナプスの接している部分が大きいほど、シナプス伝達効率がよいことから、シナプス構造からは神経伝達が睡眠中に少し低下する方向に調節されていることが示唆されました。2報目では、その構造変化の背景にある分子メカニズムについて解析が行われています。睡眠中には、ポストシナプス表面のAMPA型グルタミン酸受容体が減少し、その過程に最初期遺伝子のHomer1aがポストシナプス内に移動すること、さらにHomer1aの移動にノルアドレナリンやアデノシンが関わっていることが示されました。睡眠中には記憶の整理や定着が行われますが、その背景にシナプスレベルでの構造変化や分子シグナルの変化も伴っており、神経回路の整理が構造的に行われていることが今回の研究で明らかになりました。
1報目
Ultrastructural evidence for synaptic scaling across the wake/sleep cycle | Science
2報目
Homer1a drives homeostatic scaling-down of excitatory synapses during sleep | Science
解説記事
Synaptic scaling in sleep | Science