Bethelgeuse’s blog

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遺伝病ニーマン・ピック病C1型 (NPC1) に対する髄腔内2-hydroxypropyl-β-cyclodextrin (HPβCD) 投与の臨床試験結果

Lancetより。ニーマン・ピック病C1型はNPC1遺伝子の変異によって起こる遺伝病で、細胞内にコレステロールが蓄積するリソソーム病の一種で、種々の神経症状を呈する重篤な疾患です (ニーマン・ピック病 - Wikipedia)。β-cyclodextrinはコレステロールを除去する作用があり、培養細胞などの実験で試薬としても用いられます。その修飾体HPβCDをNPC1患者の髄腔内に直接投与し、蓄積したコレステロールを除去することで、治療を試みた臨床試験の結果が報告されました。コレステロール量が変化したことを示すバイオマーカーには24(S)-hydroxycholesterol (24[S]-HC)、臨床症状の指標としては、NPC Neurological Severity Scores (NNSS) が用いられました。その結果、HPβCDの髄腔内投与によって、血漿中および脳脊髄液の24[S]-HCが増加し、脳実質からコレステロールが引き抜かれ、減少していることを示唆する知見が得られました。また、並行して検査された臨床症状に関しても、聴覚低下など、複数の項目で改善が認められました。

Intrathecal 2-hydroxypropyl-β-cyclodextrin decreases neurological disease progression in Niemann-Pick disease, type C1: a non-randomised, open-label, phase 1–2 trial

http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(17)31465-4/abstract