Bethelgeuse’s blog

最近のneuroscience系科学論文を簡単なコメントつきでアップ

家族性ALSの原因遺伝子の一つUBQLN2の変異体が起こす疾患の分子メカニズム

Cellより。先週はCellとScienceに、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) に関する分子レベルの報告がありました。家族性ALSはたくさんの遺伝子が報告されていますが、その中の一つUbiquilin-2 (UBQLN2) の変異によって、分子レベルでどのような異常が起こるのか、が明らかにされました。UBQLN2はタンパク質の細胞内輸送を行うタンパク質ですが、今回の研究で、シャペロンタンパク質HSP70が、分解すべき異常な凝集タンパク質を認識したとき、凝集タンパク質とHSP70の複合体を、UBQLN2がプロテアソームに連れていく役割を担っていることがわかりました。ALSにおいては、UBQLN2に変異が入った結果、HSP70に対する結合能が失われ、凝集タンパク質とHSP70の複合体をプロテアソームに連れていくことができなくなるようです。そのため、分解されるべき凝集タンパク質が沈着してしまい、ALSが発症するようです。動物レベルにおいても、 変異UBQLN2 (mP520T) をノックインしたマウスでは認知機能障害が認められました。

UBQLN2 Mediates Autophagy-Independent Protein Aggregate Clearance by the Proteasome

http://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(16)30866-2

ALSの原因遺伝子はたくさんありますが、下記の総説に最近の情報も含めて一覧として記載されています。

Amyotrophic lateral sclerosis: recent genetic highlights.

http://journals.lww.com/co-neurology/Abstract/publishahead/Amyotrophic_lateral_sclerosis___recent_genetic.99298.aspx