Bethelgeuse’s blog

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ゴーシェ病やパーキンソン病 (PD) の分子治療ターゲット 補体受容体C5aR1およびグルコシルセラミド合成酵素 (GCS)

NatureとPNASにGBA変異によって発症するゴーシェ病やPDの治療ターゲットになりうる分子が報告されました。ゴーシェ病は、GBA遺伝子の変異によって、GBAがコードするグルコセレブロシダーゼ活性が低下あるいは欠損することによって発症する遺伝病です。また、ゴーシェ病の原因遺伝子GBAの変異はPDの発症リスクを高めることが知られています。

Natureでは、GBA変異によってグルコセレブロシダーゼ活性が低下し、糖脂質グルコシルセラミドが蓄積した結果、炎症が起こる分子メカニズムを明らかにしました。病態では、グルコシルセラミドの蓄積によって、グルコシルセラミドに対する自己抗体が作製され、その過程に補体C5aおよびその受容体C5aR1が関わっていました。実際に、ゴーシェ病モデルマウスでは、C5aR1遺伝子欠損によって病態の悪化が抑制されました。

PNASでは、Sanofi社の研究者が、グルコシルセラミド合成酵素 (GCS) を阻害する化合物GZ667161を使って、蓄積するグルコシルセラミドの生成を抑制することで、ゴーシェ病モデルGbaD409V/D409VマウスやPDモデルA53T–SNCAマウスの病態が改善することが明らかとなりました。

Nature

Complement drives glucosylceramide accumulation and tissue inflammation in Gaucher disease

http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature21368.html

PNAS

Glucosylceramide synthase inhibition alleviates aberrations in synucleinopathy models