Bethelgeuse’s blog

最近のneuroscience系科学論文を簡単なコメントつきでアップ

2016-07-01から1ヶ月間の記事一覧

パーキンソン病治療薬レボドパ (L-DOPA) によるジスキネジアのメカニズム

Journal of Neuroscienceより。パーキンソン病は手の振戦などの不随意運動が現れる神経変性疾患で、薬物治療にレボドパ (L-DOPA) が用いられます。しかしながら、長期間レボドパを服用すると、皮肉なことに副作用として不随意運動が、5年以内に約半数の患者…

筋萎縮性側索硬化症 (ALS) のリスク遺伝子NEK1

Nature Geneticsより。ALSの原因遺伝子やリスク遺伝子は多数報告されていますが、ALSのリスクとなる遺伝子として、新しくNEK1 (NIMA (never in mitosis gene a)-related expressed kinase 1) が同定されました。NEK1遺伝子の機能不全loss-of-function (LOF) …

シナプスのPETイメージングプローブ

Science Translational Medicineより。シナプス小胞に存在するsynaptic vesicle glycoprotein 2A (SV2A) に結合するPETプローブ [11C]UCB-Jによってヒトでシナプスの量を測定することができるようになりました。実際にヒトてんかん患者でのシナプス減少を [1…

自閉症スペクトラムの末梢神経障害が引き起こす行動レベルでの異常

Cellより。自閉症スペクトラム患者の約60%が触覚を含む体性感覚の異常があります。また、自閉症スペクトラムのマウスモデルと言われるMecp2, Gabrb3, Shank3およびFmr1遺伝子変異マウスでも同様に触覚異常が認められます。マウスにおいて、触覚になどに関わ…

脳で遺伝子発現をオフにする仕組み

Scienceより。何らかの神経活動によって遺伝子発現がオンになった後、それらの遺伝子群の発現をオフにする仕組みが明らかになりました。マウスの実験で、nucleosome remodeling and deacetylase (NuRD) 複合体によって、クロマチンのリモデリング、この場合…

霊長類アカゲザルの脳の発生段階における詳細な遺伝子発現解析

Natureより。脳の発生段階における詳細な遺伝子発現変化は、特にヒトを含む霊長類では明らかではありませんでした。今回アカゲザルの脳を、胎生40日から生後48か月に渡って、脳の部位別 (前頭葉、線条体、扁桃体、海馬、大脳皮質視覚野) に網羅的遺伝子発現…

家族性パーキンソン病の発症を早める遺伝子座の同定

Human Molecular Geneticsより。NeuroGenetics Research Consortium (NGRC) に登録された家族性パーキンソン病431名、孤発性パーキンソン病1,544名のデータを使って、ゲノムワイド関連解析 (GWAS) を行った結果、LHFPL2とTPM1の遺伝子座が、家族性パーキンソ…

知的障害の原因遺伝子としてSIN3Aが同定

Nature Geneticsより。知的障害や自閉症に関係する遺伝子は多数報告されていますが、新しい遺伝子変異としてSIN3A (switch-insensitive 3 family member A) が同定されました。SIN3Aは転写抑制因子として機能し、Rett症候群の原因遺伝子MeCP2と結合すること…

抗精神病薬によって副作用のカタレプシーが出る分子メカニズム

Neuronより。抗精神病薬のハロペリドールなどはドーパミン受容体D2Rを阻害することで薬効を発揮しますが、副作用としてカタレプシー (不自然な姿勢を長時間保つ) など錐体外路症状が現れることが知られています。D2Rは脳内の様々な細胞に発現していますが、…

多発性硬化症を対象としたS1P1,5受容体調節薬siponimod (BAF312) の臨床第2相試験結果

JAMA Neurologyより。Siponimodは、二次進行性多発性硬化症の患者を対象に現在臨床第3相試験中です。その前に行われた再発寛解型多発性硬化症患者を対象に行われた臨床第2相試験結果が論文公表されました。評価期間は最大24か月 (2年) で、安全性以外に、薬…

脳内血管病変とアルツハイマー病の関係

Lancet Neurologyより。2つの大規模臨床試験で、生前に認知機能試験を行い、かつ死後に病理解析データが得られた1143名の患者から、アルツハイマー病と脳内血管病変の関係性を解析した結果が発表されました。脳内血管病変としては、動脈硬化巣 (大小血管それ…

前頭側頭型認知症の原因となるタンパク質progranulin量と相関する遺伝子prosaposin

Nature Communicationsより。前頭側頭型認知症の原因となる遺伝子はいくつか知られていますが、その一つにGRN遺伝子のハプロ不全があります。GRNはprogranulinをコードし、そのprogranulinがハプロ不全で減少するため、前頭側頭型認知症が発症します。血漿中…