Bethelgeuse’s blog

最近のneuroscience系科学論文を簡単なコメントつきでアップ

2017-01-01から1年間の記事一覧

核酸医薬アンチセンスオリゴヌクレオチド (ASO) nusinersen (ヌシネルセン) の脊髄性筋萎縮症 (spinal muscular atrophy: SMA) の臨床第3相ENDEAR結果

New England Journal of Medicineより。SMAは難病に指定された遺伝病で、脊髄の運動神経の脱落によって筋萎縮などが起こる疾患です (下記リンク参照)。核酸医薬nusinersenは、去年米国で、今年に入って欧州および日本でも承認された、SMAに対する初の医薬品…

遺伝病ニーマン・ピック病C1型 (NPC1) に対する髄腔内2-hydroxypropyl-β-cyclodextrin (HPβCD) 投与の臨床試験結果

Lancetより。ニーマン・ピック病C1型はNPC1遺伝子の変異によって起こる遺伝病で、細胞内にコレステロールが蓄積するリソソーム病の一種で、種々の神経症状を呈する重篤な疾患です (ニーマン・ピック病 - Wikipedia)。β-cyclodextrinはコレステロールを除去す…

抗LINGO-1抗体opicinumabの急性視神経炎 (acute optic neuritis) 患者を対象とした臨床第2相試験結果

Lancet Neurologyより。多発性硬化症では脱髄が起きることで運動障害などが現れます。抗LINGO-1抗体opicinumabはオリゴデンドロサイト前駆細胞の分化、その結果として再ミエリン化を促進することが動物試験によって明らかとなっています。多発性硬化症で多く…

ゴーシェ病やパーキンソン病 (PD) の分子治療ターゲット 補体受容体C5aR1およびグルコシルセラミド合成酵素 (GCS)

NatureとPNASにGBA変異によって発症するゴーシェ病やPDの治療ターゲットになりうる分子が報告されました。ゴーシェ病は、GBA遺伝子の変異によって、GBAがコードするグルコセレブロシダーゼ活性が低下あるいは欠損することによって発症する遺伝病です。また、…

睡眠中のシナプスの構造変化: 覚醒時に比べて睡眠中はシナプス結合が減弱

Scienceより。睡眠中のシナプスの構造変化について解析した論文が2報同時に発表されました。1報目の論文では、電子顕微鏡によってシナプスの微細構造を三次元的に再構成しながら解析し、樹状突起のポストシナプスと軸索のプレシナプスが接している部分 (axon…

エクソーム解析によるパーキンソン病 (PD) のリスク遺伝子の同定

Genome Biologyより。エクソーム解析は、全エクソン解析ともよばれ、遺伝子のエクソン部分を網羅的に解析する方法です。1148名のPD患者と503名の健常者で、エクソーム解析が実施され、27個の遺伝子についてloss-of-functionにつながるバリアントがPD患者で見…

抗Nogo-A抗体ozanezumabの筋萎縮性側索硬化症 (ALS) 患者を対象にした臨床第2相試験結果の論文報告

Lancet Neurologyより。Nogo-Aは神経再生を阻害する因子として知られ、GlaxoSmithKline社がALS患者を対象に、抗Nogo-A抗体ozanezumabの臨床開発を進めていましたが、既に開発は中止となっています。2015年にALS患者を対象とした試験で、有効性を見いだせなか…

Tauアンチセンスオリゴヌクレオチド (ASO) によるtau病理の減少と神経変性の抑制

Science Translational Medicineより。Tauは認知症と深い関りを持つタンパク質で、アルツハイマー病 (AD) 患者脳の特徴的な病理像、神経原線維変化の構成成分として知られ、またその遺伝子変異によって若年性認知症、前頭側頭型認知症 (FTD) が発症します。T…

ApoEによるアミロイド前駆タンパク質APPの転写促進とアイソフォームによる違い

Cellより。ApoE4はアルツハイマー病 (AD) 発症の最大のリスク遺伝子です。ApoEにはヒトでは3つのアイソフォームE2, E3, E4があり、E4の保有者は通常は4-5人に1人の割合ですが、AD患者ではその割合が半分か、それ以上になります。ApoE4によってADリスクが上が…

ゲノムワイド関連解析 (GWAS) 1. 海馬容積、2 認知機能、と相関する遺伝子座

1. 海馬容積に関しては、Nature Communicationsより。脳の海馬は記憶と関係する重要な部位で、認知症患者では萎縮していることが知られています。33,536名のGWASによって、海馬の容積と相関する一塩基多型 (SNP) を探索した結果、6つのSNPが同定され、そのう…

アンチセンス鎖から発現するlncRNA SMN-AS1によるSMNの発現制御

Neuronより。難病の脊髄性筋萎縮症 (spinal muscular atrophy: SMA) は、ALSのような運動ニューロン疾患で、進行性に筋力低下や筋萎縮を発症する深刻な疾患です。原因遺伝子はSMN1 (Survival of Motor Neuron 1) で、この遺伝子が欠損することで、SMNタンパ…