Bethelgeuse’s blog

最近のneuroscience系科学論文を簡単なコメントつきでアップ

抗LINGO-1抗体opicinumabの急性視神経炎 (acute optic neuritis) 患者を対象とした臨床第2相試験結果

Lancet Neurologyより。多発性硬化症では脱髄が起きることで運動障害などが現れます。抗LINGO-1抗体opicinumabはオリゴデンドロサイト前駆細胞の分化、その結果として再ミエリン化を促進することが動物試験によって明らかとなっています。多発性硬化症で多く認められる症状に、視神経が脱髄することで起こる視力低下があります。そこで、同じく視神経が障害を受ける急性視神経炎患者を対象に、抗LINGO-1抗体opicinumabの作用を検討したRENEWと呼ばれる臨床第2相試験結果が論文報告されました。主要評価項目は、治療開始から24週目の再ミエリン化が設定され、そのために視神経の神経伝達速度を計測し、障害を受けた視神経の回復具合が評価されました。82名の患者が参加した臨床試験の結果、opicinumabによって神経伝達速度が速くなる (つまり、障害が回復する) 傾向は認められましたが、プラセボと比較して統計学的な有意差は認められませんでした。

Safety and efficacy of opicinumab in acute optic neuritis (RENEW): a randomised, placebo-controlled, phase 2 trial

http://www.thelancet.com/journals/laneur/article/PIIS1474-4422(16)30377-5/fulltext

Opicinumabを開発しているBiogen社は、opicinumabの本命の多発性硬化症患者を対象とした臨床試験においても、主要評価項目を達成できなかったことを、昨年6月に発表しています。

Biogen Reports Top-Line Results from Phase 2 Study of Opicinumab (Anti-LINGO-1) in Multiple Sclerosis | Biogen Media