Bethelgeuse’s blog

最近のneuroscience系科学論文を簡単なコメントつきでアップ

2016-01-01から1年間の記事一覧

α-Synucleinがミトコンドリア機能を阻害する分子メカニズム

Science Translational Medicineより。α-Synucleinはパーキンソン病などの脳内に蓄積することが知られていますが、α-synucleinがTOM20に結合し、ミトコンドリアの機能不全を起こしていることが報告されました。TOM20はミトコンドリアの機能に必要なタンパク…

Neurofilament Light Chainが神経変性疾患の進行に伴うバイオマーカーとなる可能性

Neuronより。アルツハイマー病などの神経疾患では、脳に異常沈着し、病気の進行にしたがって脳が委縮します。MRIといった画像で脳の萎縮を観察する方法以外には、脳がダメージを受けていることを判定する体液性のバイオマーカーはありませんでした。今回の研…

腸内環境の変化がメタボを起こすメカニズム

Natureより。腸内環境の変化がメタボリック症候群と関係していることは知られていましたが、そのメカニズムはよくわかっていませんでした。腸内細菌の変化によって、酢酸の産生量が増加し、酢酸によって副交感神経が刺激されます。その結果、インスリンやグ…

抑制性のシナプスを除く分子生物学的手法の開発

Nature Methodsより。GFE3というツールを使って抑制性のシナプスの機能を壊す方法です。GFE3は、E3リガーゼと、gephyrin (抑制性ポストシナプスに発現) に結合する抗体様タンパクFingRの融合タンパク質です。GFE3を神経細胞に発現させることで、gephyrinがユ…

家族性Parkinson病の原因遺伝子としてTMEM230が同定

Nature Geneticsより。家族性のParkinson病 (PD) の原因となる遺伝子変異はたくさん同定されていますが、新たにTMEM230という遺伝子の変異がPDの原因となることが報告されました。TMEM230は膜貫通タンパク質で、シナプス小胞の輸送に関わっているようです。 …

RNAを標的とするCRISPRシステム

Scienceより。最近ゲノム編集で多用されているCRISPR-Casシステムは、通常DNAを切断しますが、CRISPR-Cas effectorのC2c2はRNAをガイドとして、RNAを切断するようです。CRISPR-Casシステムが飛躍的に発展を遂げています。 C2c2 is a single-component progra…

記憶を忘却するシグナル伝達に重要な遺伝子Scribble

Neuronより。ショウジョウバエでの報告ですが、Scribbleという足場タンパク質の上で、Rac1 -> Pak3 -> Cofilinという流れでシグナル伝達が行われ、記憶の忘却が促進されるようです。記憶の維持という観点からは、分子レベルで様々な研究がされていますが、逆…

多発性硬化症の原因となるNR1H3のミスセンス変異の発見

多発性硬化症には再発寛解型と進行型 (一次進行型と二次進行型があり) に分類されますが、治療が難しいとされる一次進行型多発性硬化症を発症する家系から、その原因となるNR1H3のミスセンス変異が発見されました。NR1H3は核内転写因子LXRAをコードし、脂質…

ALS患者の生存と相関する遺伝子CAMTA1 [文献リンク]

Association of a Locus in the CAMTA1 Gene With Survival in Patients With Sporadic Amyotrophic Lateral Sclerosis https://archneur.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2525542

ALS患者の生存と相関する遺伝子CAMTA1

JAMA Neurologyより。ALS患者4256名のGWAS解析の結果、10q23と1p36にALS患者の生存期間と相関する新しい遺伝子座が同定されました。1p36のrs2412208という部位はCAMTA1 (calmodulin binding transcription activator 1) 遺伝子座に含まれています。ALSの原因…

脳の透明化を使った神経活動のイメージング

脳の透明化を行って、脳内の神経活動を可視化する技術がCellに2報報告されました。単に透明化するだけでなく、脳の可塑的変化をイメージングし、定量する技術が進歩しています。 Mapping of Brain Activity by Automated Volume Analysis of Immediate Early…

CRISPR/Cas9を使った細胞系譜のトレース

Whole organism lineage tracing by combinatorial and cumulative genome editing http://science.sciencemag.org/content/early/2016/05/25/science.aaf7907 5/26 Scienceより。CRISPR/Cas9を使って特定のDNA barcodeを細胞に導入することで、特定の細胞か…

気になった科学論文の記録

最近の気になった科学論文を簡単なコメントつきでアップしていきます。