Bethelgeuse’s blog

最近のneuroscience系科学論文を簡単なコメントつきでアップ

2016-01-01から1年間の記事一覧

家族性ALSの原因遺伝子の一つUBQLN2の変異体が起こす疾患の分子メカニズム

Cellより。先週はCellとScienceに、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) に関する分子レベルの報告がありました。家族性ALSはたくさんの遺伝子が報告されていますが、その中の一つUbiquilin-2 (UBQLN2) の変異によって、分子レベルでどのような異常が起こるのか、が明…

RNAseqを使った単一ニューロンの投射解析MAPseq

Neuronより。ニューロンが脳内の他の部位に投射しているのを解析する方法は、特定のニューロンに蛍光タンパク質などを発現させる方法が一般的です。今回の報告では、ニューロンに特定のバーコード配列 (人工的な塩基配列) を発現させた後で、脳を細かくスラ…

脳での神経新生のPETイメージング

Journal of Neuroscienceより。細胞が分裂するときに取り込まれるチミジンアナログに18F標識した[18F]FLTを使って、ラット脳内の神経新生の様子をPETでイメージングする方法が報告されました。[18F]FLT単独ではイメージングできるほど脳内への集積が認められ…

23andMeの遺伝子データを使った大うつ病のゲノムワイド関連解析 (GWAS)

Nature Geneticsより。遺伝子検査などのサービスを実施している23andMeのデータを使って、数万人規模の大うつ病患者のGWAS解析をした結果が報告されました。その結果、OLFM4、TMEM161B–MEF2C、MEIS2–TMCO5A、NEGR1などの15の遺伝座が大うつ病と相関している…

パーキンソン病治療薬レボドパ (L-DOPA) によるジスキネジアのメカニズム

Journal of Neuroscienceより。パーキンソン病は手の振戦などの不随意運動が現れる神経変性疾患で、薬物治療にレボドパ (L-DOPA) が用いられます。しかしながら、長期間レボドパを服用すると、皮肉なことに副作用として不随意運動が、5年以内に約半数の患者…

筋萎縮性側索硬化症 (ALS) のリスク遺伝子NEK1

Nature Geneticsより。ALSの原因遺伝子やリスク遺伝子は多数報告されていますが、ALSのリスクとなる遺伝子として、新しくNEK1 (NIMA (never in mitosis gene a)-related expressed kinase 1) が同定されました。NEK1遺伝子の機能不全loss-of-function (LOF) …

シナプスのPETイメージングプローブ

Science Translational Medicineより。シナプス小胞に存在するsynaptic vesicle glycoprotein 2A (SV2A) に結合するPETプローブ [11C]UCB-Jによってヒトでシナプスの量を測定することができるようになりました。実際にヒトてんかん患者でのシナプス減少を [1…

自閉症スペクトラムの末梢神経障害が引き起こす行動レベルでの異常

Cellより。自閉症スペクトラム患者の約60%が触覚を含む体性感覚の異常があります。また、自閉症スペクトラムのマウスモデルと言われるMecp2, Gabrb3, Shank3およびFmr1遺伝子変異マウスでも同様に触覚異常が認められます。マウスにおいて、触覚になどに関わ…

脳で遺伝子発現をオフにする仕組み

Scienceより。何らかの神経活動によって遺伝子発現がオンになった後、それらの遺伝子群の発現をオフにする仕組みが明らかになりました。マウスの実験で、nucleosome remodeling and deacetylase (NuRD) 複合体によって、クロマチンのリモデリング、この場合…

霊長類アカゲザルの脳の発生段階における詳細な遺伝子発現解析

Natureより。脳の発生段階における詳細な遺伝子発現変化は、特にヒトを含む霊長類では明らかではありませんでした。今回アカゲザルの脳を、胎生40日から生後48か月に渡って、脳の部位別 (前頭葉、線条体、扁桃体、海馬、大脳皮質視覚野) に網羅的遺伝子発現…

家族性パーキンソン病の発症を早める遺伝子座の同定

Human Molecular Geneticsより。NeuroGenetics Research Consortium (NGRC) に登録された家族性パーキンソン病431名、孤発性パーキンソン病1,544名のデータを使って、ゲノムワイド関連解析 (GWAS) を行った結果、LHFPL2とTPM1の遺伝子座が、家族性パーキンソ…

知的障害の原因遺伝子としてSIN3Aが同定

Nature Geneticsより。知的障害や自閉症に関係する遺伝子は多数報告されていますが、新しい遺伝子変異としてSIN3A (switch-insensitive 3 family member A) が同定されました。SIN3Aは転写抑制因子として機能し、Rett症候群の原因遺伝子MeCP2と結合すること…

抗精神病薬によって副作用のカタレプシーが出る分子メカニズム

Neuronより。抗精神病薬のハロペリドールなどはドーパミン受容体D2Rを阻害することで薬効を発揮しますが、副作用としてカタレプシー (不自然な姿勢を長時間保つ) など錐体外路症状が現れることが知られています。D2Rは脳内の様々な細胞に発現していますが、…

多発性硬化症を対象としたS1P1,5受容体調節薬siponimod (BAF312) の臨床第2相試験結果

JAMA Neurologyより。Siponimodは、二次進行性多発性硬化症の患者を対象に現在臨床第3相試験中です。その前に行われた再発寛解型多発性硬化症患者を対象に行われた臨床第2相試験結果が論文公表されました。評価期間は最大24か月 (2年) で、安全性以外に、薬…

脳内血管病変とアルツハイマー病の関係

Lancet Neurologyより。2つの大規模臨床試験で、生前に認知機能試験を行い、かつ死後に病理解析データが得られた1143名の患者から、アルツハイマー病と脳内血管病変の関係性を解析した結果が発表されました。脳内血管病変としては、動脈硬化巣 (大小血管それ…

前頭側頭型認知症の原因となるタンパク質progranulin量と相関する遺伝子prosaposin

Nature Communicationsより。前頭側頭型認知症の原因となる遺伝子はいくつか知られていますが、その一つにGRN遺伝子のハプロ不全があります。GRNはprogranulinをコードし、そのprogranulinがハプロ不全で減少するため、前頭側頭型認知症が発症します。血漿中…

多発性硬化症患者の腸内環境の変化

Scientific Reportsより。多発性硬化症患者31名の腸内細菌と、健常者36名の腸内細菌を解析した結果、多発性硬化症患者ではPsuedomonas, Mycoplana, Haemophilus, Blautia,およびDorea属の細菌が多い一方で、健常者ではParabacteroides, AdlercreutziaおよびP…

RNAのメチル化と記憶の情報処理機構

Journal of Neuroscienceより。マウスの研究で、N6-methyladenosine (m6A) というRNAのメチル化が記憶の情報処理過程に重要な役割を果たしていることがわかりました。学習行動試験の後で、前頭前皮質においてm6Aが増加していることが見いだされ、さらに前頭…

ヒトニューロンでの単一細胞RNAシーケンスで明らかになったニューロンのサブタイプ

Scienceより。ヒトの死後脳のニューロンにおいて、single-nuclei sequencingでの単一細胞レベルでのRNAシーケンスによる遺伝子発現解析の結果、ニューロンが16種類のサブタイプに分類できることが報告されました。 Neuronal subtypes and diversity revealed…

ウエストナイル脳炎で記憶障害が起こる分子メカニズム

Natureより。蚊によって媒介される感染症、ウエストナイル熱はまれに脳炎を起こし、記憶障害が後遺症となって残ります。マウスのウエストナイルウイルス感染症モデルで、その分子メカニズムを解析した結果が報告されました。感染によって、補体分子C1QAの発…

α7ニコチン受容体アゴニストABT-126の統合失調症患者の認知機能に対する臨床試験

Neuropsychopharmacologyより。α7ニコチン受容体アゴニストABT-126の統合失調症患者の認知機能に対する作用を検証する臨床Ph2b試験。432名の統合失調症患者が参加し、80%にあたる患者が試験を最後まで完了しました。主要評価項目は認知機能スコアMATRICS Con…

多発性硬化症のリスクとなる新しい遺伝子座の同定

Science Advancesより。ドイツにおいて、4,888名の多発性硬化症患者と、10,395名の対照健常人のgenome-wide association study (GWAS) の結果、新規の遺伝子座としてL3MBTL3, MAZ, ERG, SHMT1が同定されました。L3MBTL3, MAZ, ERGは免疫細胞の機能制御に関わ…

マウスの大脳皮質-線条体神経投射の詳細な解析

Nature Neuroscienceより。大脳皮質-線条体神経投射は、体性感覚、認知機能や感情に重要な役割を果たしている神経回路で、ハンチントン病などでその神経投射が脱落することが知られています。マウスでの研究で、大脳皮質-線条体神経投射の詳細なマップが明ら…

小脳性運動失調症の新しい原因遺伝子CAPN1

Cell Reportsより。小脳性運動失調症にはたくさんの原因遺伝子が同定されていますが、現在英国に住むバングラデシュ系の家系から、CAPN1の変異によって小脳性運動失調症が起こることが報告されました。CAPN1はカルシウム依存的なプロテアーゼcalpain-1をコー…

パーキンソン病患者由来のドーパミン神経細胞での網羅的遺伝子発現解析

Cell Reportsより。家族性および孤発性のパーキンソン病の患者からiPS細胞を作製し、パーキンソン病で神経変性することが知られる、中脳ドーパミン細胞にiPS細胞を分化させ、パーキンソン病の病態細胞モデルを複数作製しました。病態細胞としての表現型とし…

妊娠中の腸内環境の変化と生まれてくる子供の神経発達障害

Cellより。妊娠中の肥満によって、生まれてくる子供に自閉症などの神経発達障害が起こるリスクが増加します。マウスの実験で、母親マウスに食事性の肥満を起こすと、生まれてくる子供に社会性行動異常が認められ、さらに脳内の神経伝達が低下していました。…

ストレスでてんかん発作が起こりやすくなる分子メカニズム

Science Signalingより。てんかんの患者では不安やストレスによっててんかん発作が起こる頻度が増加します。その分子メカニズムとして、ストレスホルモンcorticotropin-releasing factor (CRF) が流すシグナルが変化することが報告されました。つまり、てん…

若い世代 (children and adolescents) での抗うつ薬の作用比較

The Lancetより。若い世代 (children and adolescents) のうつ病に対する14種類の抗うつ薬 (amitriptyline, citalopram, clomipramine, desipramine, duloxetine, escitalopram, fluoxetine, imipramine, mirtazapine, nefazodone, nortriptyline, paroxetin…

脳のオリゴデンドロサイトの細胞系譜は12種類

Scienceより。単一細胞のRNA-seqの結果、マウスでは脳のオリゴデンドロサイトの細胞系譜は12種類に分かれているようです。オリゴデンドロサイト前駆細胞から成熟オリゴデンドロサイトまで、今まではデータベースなどでも3種類くらいでしたが、思った以上にオ…

多発性硬化症の造血幹細胞移植療法の臨床試験

The Lancetより。24名の多発性硬化症の患者さんに対して、カナダの3つの病院が行った臨床試験の成績です。多発性硬化症は、免疫細胞が自分自身のミエリンに対して免疫反応を起こしてしまうことにより発症する、自己免疫疾患的側面があります。そこで著者らは…