Bethelgeuse’s blog

最近のneuroscience系科学論文を簡単なコメントつきでアップ

ApoEによるアミロイド前駆タンパク質APPの転写促進とアイソフォームによる違い

Cellより。ApoE4はアルツハイマー病 (AD) 発症の最大のリスク遺伝子です。ApoEにはヒトでは3つのアイソフォームE2, E3, E4があり、E4の保有者は通常は4-5人に1人の割合ですが、AD患者ではその割合が半分か、それ以上になります。ApoE4によってADリスクが上がるメカニズムについては様々な説がありますが、今回新規の分子メカニズムが報告されました。ApoEは通常アストロサイトから分泌されていますが、ヒト神経細胞を使った実験において、Aβペプチドを増やす、グリア由来の分泌因子を探索した結果、その一つとしてApoEが同定されました。そのAβペプチドを増加させる作用は、E2<E3<E4の順で強くなり、AD発症のリスクと相関していました。さらにその分子メカニズムを探索した結果、ApoEはMAPキナーゼカスケードを活性化し、転写因子AP-1の活性化、Aβペプチドの前駆体タンパク質APPの転写を誘導し、Aβペプチドの増加につながっていることがわかりました。シグナルカスケードに関しては、Graphical Abstractにわかりやすく描かれています。

ApoE2, ApoE3, and ApoE4 Differentially Stimulate APP Transcription and Aβ Secretion

http://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(16)31760-3